①水産資源の持続的利用に向けた管理を推進する
(目標14)
漁業者の自主的な管理を推進するため、資源管理計画の策定やその実践に取り組んでいます。
まだい、きんめだい、ひらめ、あわび、さざえ、いせえび、くるまえび、7魚種については、関係漁業者自らが県の調査結果を基に検討を重ね、小型魚の再放流や漁具・漁法の制限などを内容とする資源管理計画を策定し、現在は、この計画に基づく資源管理が実践されています。
本連合会は資源管理計画を策定するための協議会の事務局となるなど、その推進に努めてきています。
漁業者による自主的な資源管理については、県が策定した「資源管理方針」に基づき、各地域で策定された「資源管理協定」により実践されています。
本連合会は県の資源管理協議会に参画し、計画の履行確認などに取り組んでいます。
②水産資源を増やすための取り組みを推進する
(目標14)
様々な種類の種苗の放流や、あさりの増殖等に取り組んでいます。
激減したあさり資源の再生を目指して、発生した稚貝を保護するため、囲い網の設置に取り組んでいます。
また、あさりの生息環境を維持するため、干潟用トラクターを整備し、干潟の耕うんに取り組んでいます。
かつては東京湾の代表的な漁獲対象種であったはまぐりについて、県が生産した種苗を中間育成し(一定の生残が得られる放流サイズまで育てること)、干潟へ放流しています。
豊かな東京湾を取り戻すため、県や関係機関と連携して、なみがい(しろみる)・なまこの種苗放流や、かき養殖等に取り組んでいます。
(公財)千葉県水産振興公社が実施している、まだい、ひらめ、まこがれい、あわびの種苗放流について、公社の運営や栽培漁業推進協議会に参画し、事業が円滑に実施されるよう努めています。
③東京湾における豊かな海づくりのための課題について理解を醸成する
(目標13、目標14)
漁業者の組織づくりや、研修会の開催、パンフレットの作成配布に取り組んでいます。
東京湾を豊かな海にすることを目指して、関係する漁業団体(千葉県漁連、東京都漁連、神奈川県漁連、東京湾に面した漁協)により、「東京湾関係漁連・漁協連絡会議」を令和2年に設立しました。
その後、この会議が中心となり、国等への漁場環境保全に関する要望の働きかけ、東京湾における豊かな海づくりのための課題等に関する研修会の開催、パンフレットの作成等、理解醸成に向けた活動に取り組んでいます。
パンフレットについては、各種イベントや教材として小学校等に配布してきました。
④ブルーカーボンの増大と消失した藻場の再生
(目標13、目標14)
東京湾において浅場造成やのり養殖の振興に努めるとともに、カジメなどの藻場の再生に取り組んでいます。
房総半島の沿岸周辺に繁茂する、アラメ、カジメ、アマモなどの藻場は、水産生物の餌や生息場として重要な役割を担ってきました。また、最近では、世界が気候変動対策として二酸化炭素排出削減に取り組む中で、その吸収源(ブルーカーボン生態系)として期待されています。
一方、東京内湾のアマモ場は、埋め立てによりその多くが消失し、内房から外房のアラメやカジメの藻場は、磯焼けと呼ばれる藻場が消失する海域が拡大しています。
このような状況の中で、東京湾においては、日本製鉄株式会社と連携して千葉県君津市沿岸で海藻藻場造成を行い、ジャパンブルーエコノミー技術研究組合からその造成効果が認められ、Jブルークレジットを獲得できました。
また、東京湾ではのり養殖も盛んでブルーカーボンとして機能しており、今後は、その振興に引続き努めるとともに、のり養殖業のカーボンクレジットの獲得に向け取り組んでいきたいと考えています。
さらに、内房から外房の藻場の消失に対しては、県が設置した「千葉県磯焼け対策会議」に参画するとともに、漁業者が実施する藻場再生の取り組みを支援しています。
- 注:磯焼けの原因は、黒潮の接岸による海水中の養分の減少など、様々な原因があると考えられてきました。最近では、温暖化による藻食性生物の増加が注目されています。
- 注:ブルーカーボン生態系:浅海域に生息するアマモ、ワカメ等の海洋植物は「ブルーカーボン生態系」と呼ばれ、光合成により大気中の二酸化炭素を吸収し、有機炭素「ブルーカーボン」として貯留します。また、枯死したブルーカーボン生態系は海底に堆積し、底泥へ埋没し続けることにより、ブルーカーボンが貯留されます。岩礁に生育するワカメやコンブなどの海藻では、葉状部が潮流の影響により外洋に流され、深い中深層などに長期間に留まることによって、ブルーカーボンが貯留されます。
- 注:Jブルークレジットとは、ジャパンブルーエコノミー技術研究組合が、当組合から独立した第三者委員会による審査・意見を経て、認証・発行・管理するカーボンクレジットです。他のカーボンクレジットと同様、企業等が排出する二酸化炭素とオフセット(相殺)することができます
写真:君津市沿岸の海藻藻場造成における海藻の繁茂状況
⑤豊かな海づくりに役立つ調査を行う
(目標13、目標14)
東京湾において、水産生物に大きな被害を与える貧酸素水塊の分布等に関する調査に取り組んでいます。
東京湾は、埋め立て等により大きくその形を変えただけでなく、流れ込んでいる河川の流域に住むおおよそ3千万人の人々の生活活動や湾岸の企業活動により大きく変化してきております。
また、気候変動等に伴う海水温度の上昇などにより、千葉県周辺海域に生息する海洋生物の種類や量も大きく変化してきています。
我々漁業関係者も、これらの漁場環境の変化に的確に対応していく必要があり、そのためには、調査によりその変化を正確に把握することが何より重要です。
このため、漁業者と連携し、水産生物に大きな影響を与える貧酸素水塊の分布に関する調査を行っています。また、市川市から富津市の沿岸に9基のモニタリングブイを設置し、海洋観測を実施しています。
これらの収集したデータは漁業操業に活用すると同時に、県などの研究機関に提供し、対策の研究や貧酸素水塊分布予測システムの構築に役立っています。
- 注:貧酸素水塊は、夏場に東京内湾の底層に発達する酸素をほとんど含まない水塊です。秋口に東北東の風が吹くと湧昇し青潮となり、貝類の大量死亡などを引き起こします。
⑥円滑な漁業活動を確保する
(目標13、目標14、目標17)
海底の操業障害物の回収・処理や、大雨時に河川から流出する流竹木の被害軽減に取り組んでいます。
世界でも最も経済活動が盛んな東京湾の海底には、様々な操業障害物が沈んでいます。また、気候変動による温暖化により豪雨の激しさも増すとともに頻度も多くなり、河川からの流竹木により大きな漁業被害が発生しています。
このような中で、かつての漁場環境を取り戻すため、漁業者や漁協と連携して漁業障害物を回収し適正な方法で処分を行っています。漁船で回収できない場合には起重機船での処分も行っています。
また、河川からの流竹木被害を減らすため、県や市町村と「河川域・海域及び海岸域の環境に関する意見交換会」を開催し、堰に集積した流竹木の回収や、伐採した竹木の適正処理を推進しています。
⑦低利用魚などの活用や安全な食品の供給
(目標12、目標14)
「ISO22000」認証を取得し実践することにより、安全・安心で、産地発の高品質な水産物の供給に取り組んでいます。
本連合会は安全安心の食品を消費者に届けるために、国際標準化機構(ISO)が策定した食品安全に関するマネジメントシステム規格であるISO22000を取得し実践しています。
また、魚介類は、健康への良い効果や美味しさが強みになっている一方、価格が高いことや調理の手間がかかることなどが弱みになっているといわれます。このような消費者ニーズに合った水産物を提供するため、あさり事業所とのり加工事業所に加え、新たに、高度な加工製造機器を整備した銚子水産加工センターを設置しました。
今後も、低利用魚の活用も含め、産地発の高品質で手頃な水産物の開発提供に努めてまいります。
水産物を学校給食に提供するとともに、のりの食育体験学習に取り組んでいます。
周りを海に囲まれている我が国では、豊富な水産物を活用した貴重な食文化が発達してきており、水産物の摂取が健康に良い効果を与えることも含め、伝承していくことが重要です。
しかし、食の簡便化志向等により、家庭において魚食に関する知識の習得や体験等の食育の機会を十分に確保することが難しくなってきています。
このような状況の中で、食文化を伝えていく取り組みとして、学校給食等を通じ水産物に親しむ機会を作ることが注目されてきています。
本連合会では、地魚を子供に好まれるような商品開発を行い学校給食に提供しています。
また、のりを学校給食のメニューに加えてもらえるよう取り組むとともに、小学校でのりの生産工程や食べ方についての特別授業の実施に協力しています。
さらに、水産業界団体とともに、「千葉県シーフード普及促進協議会」を結成し、県産水産物の美味しさと優れた栄養特性などを普及するため、学校の食育授業や料理教室に対して、食材を提供するとともに、おさかな普及員を派遣し、効果的な取り組みになるよう取り組んでいます。
公益財団法人漁船海難遺児育英会の運営に参加するとともに、募金活動に協力しています。
(公財)漁船海難遺児育英会は、漁業に従事中、海難等の災害により死亡・行方不明となった場合などの場合において、被災者の子弟に対する学資の支給など、就学の機会の確保に資する取り組みを行っています。
本連合会は、千葉県内における事務局として育英会の運営に参画するとともに、募金活動に協力しています。
⑩洋上風力発電と漁業の共生策の推進
(目標7、目標8、目標11、目標14、目標17)
洋上風力発電との共生について、共存・共栄が可能となるよう関係漁協と連携して取り組んでいます。
洋上風力発電など再生可能エネルギーは、温室効果ガスを排出せず、国内で生産できることから、エネルギー安全保障にも寄与できる重要な国産エネルギー源であり、国はその推進に力を入れているところです。
また、国際的にも重要な取り組みであり、SDGsでも目標7として掲げられているところです。
さらに、洋上風力発電施設の設置や運営によって経済活動が活発となり、新たな雇用などを通して地域経済や地域社会の活性化が期待できます。
本連合会は、洋上風力発電促進区域の指定及び促進区域における発電事業の実施に関し、必要な協議を行うための協議会に参加するとともに、関係漁業協同組合等と連携し洋上風力発電施設の設置によって漁業に対して支障が出ないことを確認した上で、洋上風力発電と漁業との的確な共生策が確保され、共存共栄が可能となるよう調整等に取り組んでまいります。
⑪海業の推進
(目標11、目標12、目標14、目標17)
豊かな自然や漁村ならではの地域資源の価値や魅力を活かした「海業」の推進に取り組んでいます。
漁村は、豊かな自然環境、四季折々の新鮮な水産物や特徴的な加工技術、伝統文化、親水性レクリエーションの機会等の様々な地域資源を有しています。漁村の活性化のためには、それぞれが有する地域資源を十分に把握し最大限に活用することが重要です。
このため、国では、「海や漁村の地域資源の価値や魅力を活用する事業」と定義される海業を、水産業と相互に補完しあう産業として育成することで漁村の活性化を目指すとしています。
漁港エリアを活用した海業としては、水産物等の販売・提供、プレジャーボートの受入れ、陸上養殖を行う事業、水域を活用した畜養・養殖、漁業体験、海釣りを行う事業等が挙げられます。
首都圏に位置する千葉県では、元々観光地として多くの方々が都市部から訪れていることから、長年にわたって漁業協同組合の事業として海業が推進されてきました。
本連合会は、千葉県の海業推進のための検討会や、地域ごとに設置された海業推進協議会に参加するとともに、漁協が実施する海業が一層推進されるよう取り組んでまいります。
⑫新規漁業就業者の確保
(目標8、目標11、目標14)
漁業研修事業の活用等による新規漁業就業者の確保に取り組んでいます。
漁業者の高齢化や減少が進む中で、漁業後継者の確保が重要な課題となっていますが、過去から後継者の主体となってきた漁家の子弟だけでは十分な人数を確保するのは困難な状況です。
一方、全国の漁業就業者のうち、他の産業から新たに漁業に就業する人はおおむね7割を占めており、就業先・転職先として漁業に関心を持つ都市出身者も少なくありません。こうした潜在的な就業希望者を漁業後継者として確保・育成していくことも重要です。
本連合会では、全国規模で開催される「漁業就業支援フェア」に参加する漁業者や漁協を支援するとともに、千葉県への漁業就業希望者に対して、国や県の漁業研修制度を活用して研修を実施するなどして、実際の就業に繋げるよう取り組んでいます。
今後とも県、市町村、漁協と連携して漁業就業者の確保に努めてまいります。
⑬漁業系廃棄物の再利用の推進
(目標12、目標17)
漁業系廃棄物(漁網、ロープ、FRP)の再資源化に取り組んでいます。
漁網などの漁業系資材は石油製品が多く、塩分を含み、付着物が多いなどの課題はあるものの、基本的には再資源化の見込みがあります。
本連合会では、関係企業、漁業者、漁協と連携し、使用済み漁業系資材の再資源化に向け取り組んでおり、一部の漁網では再資源化が可能となってきております。
⑭電力節約、廃棄物の削減、プラスチック使用量の削減
(目標7、目標12)
事業所のLED化による電力消費量の削減、コピー紙の使用量の削減、商品包装用難分解性プラスチック使用量の削減に取り組んでいます。
既に、水産会館及び各事業所において照明のLED化を実現しています。
さらに、コピー紙などの使用量削減に取り組むとともに、商品包装用難分解性プラスチックの使用量の削減にも取り組んでいます。
職員及び従業員それぞれが魅力を感じ、情熱をもって活躍できる職場を目指して取り組んでいます。
沿岸漁業では、かねてより性別役割分業制がとられており、主に、男性は海上での漁獲、女性は陸上作業(経営・加工・販売)及び陸に近い漁場での漁獲などに従事し、漁業者は男女共に活躍しています。
本連合会でも、職場での男女共同参画を推進し、男女区別なく、業務に必要な知識や資格、コミュニケーション能力などが習得できるよう、スキルアップ研修の受講を勧め、スタッフそれぞれが自己能力を磨き上げて、漁業者と共に活躍できる職場を目指して取り組んでいます。